少年少女リアル
 小さい子供が僕等を追い抜いていく。

「あっちゃん! 待てぇー!」

父親らしい若い男が小走りでそれを追い掛けていった。子供と同じくらいはしゃいでいる。

「ちょっと、あんまり走らせないでよ! 転んで梢姉に怒られるの、私なんだから!」

二人に呼び掛けながら、細い女の人が僕等を追い抜いていく。さっきの男が大丈夫だと言った途端、あっちゃんと呼ばれた男の子は転んでしまった。

「ほら見ろぉぉー!」

このやり取りを見て、向井さんが小さく笑ったのが分かった。


「文化祭まであと一か月とちょっとかぁ。頑張らなきゃ」

「看板はもうすぐで完成だもんな。さすがプロだ」

「あはは、曾根君が手伝ってくれたおかげだよ」

いや、僕が手伝ったのはほんの一部だ。一重に彼女の力だと思う。

「看板は順調として、部活の方は?」

追い掛けっこは、どうやら今度は全員参加になったらしい。子供を抱き上げた男は楽しそうな声を上げながら、走って逃げていった。
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