少年少女リアル
 冴木が飛び出そうと、静まり返りはしなかった。それも寂しい話だが、隣りにいた僕でも、分かる気がしないでもない。

席へ戻ると、佳月は作業をほっぽり出して携帯を触っていた。

「飽きた」

「まだ、五人分しか出来てないのに」

僕等に課せられたミッションは、ベストの決められた位置にボタンを縫い付ける事だった。
中学時代に、家庭科の授業で習ったという事だけは覚えていたけれど、縫い付け方までは覚えていなかった。
ついさっき元橋さんに教えてもらうと、初めて聞いたような仕様だった。

「俺は三つも付けたぞ。お前はまだ二つしか付けてないじゃん」

「一つしか変わらないだろ」

僕がいない間一つしか仕上げてないのかよ。

「一つも、だっつーの。第一、千暁が縫い付けたやつボタンの位置が歪んでるし」

「え」

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