少年少女リアル
 看板を運び終える前に、向井さんが走ってくる姿が見えた。目が合わないうちに、顔を背ける。

「おせぇよー」

「あ、あの、ごめんなさいっ!」

「場所、ここで合ってんの?」

誰かがそう尋ねると、彼女は小さな声で返事をした。
掛け声はなかったけれど、四人息ぴったりで看板をそっと置く。

「ありがとう」

律儀に誰かが「いいえ」と返した。

運び終えたら僕等はもう用無しだ。胸糞の悪いこの場にこれ以上居座る必要なんてない。

そそくさ立ち去ってしまえとイライラ足を動かす。

「おい、待てよ」

後ろから佳月が追ってくる。横に並ぶなり、顔を覗き込んできた。

「お前、向井に怒ってんの?」

「だから、怒って」

「怒ってるだろ」

言葉を遮られ、言い返せなくなってしまった。逸らしたままの視線が不自然で、どうしようもなくなる。

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