失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




「知らないの?あそこ音楽の神様な

んだよ」

「へえ~そうなんだ」

ヤツが意外にも関心を示した





玉久司(たまくじ)は島の名前で

僕らの住む街は比較的海に近く

玉久司島の斎田弁天は

良く大晦日から元旦にかけては

周辺のみならず電車や車で初詣に

参拝する人達でごったがえす

島といっても大きな桟橋で繋がり

車も通れるようになっている

その島の一番高いところに

斎田弁天は祀られていて

あんなに人が行くんだから多分

ご利益がたくさんあるんだろう

でも我が家は神社仏閣には

基本的に興味がないので

僕は一度も行ったことがなかった





「あそこさ…音楽関係のアーティス

トとか芸能人とか良くお詣りに行く

んだってよ…デビューの新譜の発売

のときに祈願してすごいブレイクし

た新人とかいてさ」

他の2人もそういう情報には

さっぱり疎い…らしい

「知らなかった…あそこがそんな

とこだったなんて…近いのにな」

ヤツが感心している

「んでさ…最近流行りのパワースポ

ットの本に載ったんだよ…あそこ」

どうやらエネルギーもチャージ

出来るらしい

「うちはさ商売してるから親が詳し

いし…たまに行くよ…元気になるよ

ほんと…緑もいっぱいだし」

そういえば最近そんな所には

行ってないな

「どうだろ…みんなで行かない?

必勝祈願しない?…神頼みくらい

しなきゃ本選勝ち残れないし…んで

さ…この夏最後まで乗り切れるよう

にさ…みんなで元気もらいに行こう

よ…多分もっと良くなるよ」

「天使…だからな…オレたち」

ヤツがうっとり(うっかりの間違い)

と天を見上げた







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