失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】




やはりジリジリと日が照り蒸し暑く

歩道の街路樹の青葉がまぶしい

駅前のバス停に僕たちは集合した

そこから玉久司島直通のバスが

1時間に2本出ている

「朝から暑いなー」

先輩が大きなトートバッグを

バス停のベンチに置き隣に座った

「ありがとうございます」

その中身は僕たち4人分の昼ご飯だ

「それ僕持ちますから」

「おー気が利くぅ」

ヤツがコンビニから帰ってくる

ヤツと僕は飲み物の係

さっきのジャンケンでヤツが負けて

コンビニに買い出しに行った

「皆の衆…心して飲めよ」

「ハーイ!頂きマース」

オヤツ係のナヲさんも

大きなトートバッグを持っている

…遠足だ

こんな雰囲気久しぶりだよな

なにか懐かしさを感じて感慨深い

暑いが朝早いので清々しい





バスがターミナルに入って来た

まばらに降りる乗客を待って

僕たちはバスに乗り込んだ





バスに揺られ30分くらいすると

前方に海が見えてきた

そのまた前方にこんもりとした

緑の島が見えてきた

「あれが玉久司島かあ」

初めて来る…はずが

この景色…なんか見たことある

僕はぼんやりした記憶を辿って

その景色を眺めていた

そんなうちに終点に着いた

「結構早かったね」

「あれだけしゃべってたら1時間で

も早いよ」

バスの中は僕たちの他には

実際3~4人しかいなくて

僕たちは一番後ろの席を占領して

大いに盛り上がっていた





バスの終点は

広い駐車場の端にあった

降りると潮の香りがした

「潮風久しぶりだー」

ヤツが騒ぐ

…なんだろ

ここ見たことある

駐車場は細長く海沿いに伸びている

僕たちは桟橋に向かって歩き始めた

駐車場に沿って海側に歩道がある

歩道は少しづつ下に下がっていき

桟橋へと続いていた…





…待って

いや

まさか…そんな…

ここ…

僕は駐車場の一番奥を眺めた

一望で海の見渡せるそこは

そこは

僕の






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