失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「神さま…おはようございます
我々『爆裂Kiss Love天使』という
バンドです…本日お願いがあって
やって参りました…バンド甲子園の
県大会を勝ち…決勝まで進めますよ
うによろしくお願い致します
オレたちの歌の中の祈りを聞いて
下さい…『愛でこの世界を満たして
と』このメッセージを全国のお茶の
間にテレビを通して伝えて下さい!
よろしくお願い致します!」
「よ…良く言った…!」
先輩が思わず呟いた
「では皆で一礼!」
ヤツの合図で僕らは深くお辞儀を
していた
静かに拝殿から下がり
拝殿の階段を降りた
「すごいな…あの挨拶前もって考え
てたのか?」
僕はヤツに尋ねた
「いや…アドリブだ」
「先輩って本番に強い人デスネ!」
良く噛みもせずにやったな…
「なんか…言わされた感じ」
「誰に?」
「わからん…才能…いや霊感か?」
「さて…実はさ…まだ上がある」
「そうなんですか」
先輩は僕たちに尋ねた
「奥の院があるんだよね…かなり急
で…鎖場がある…だけどせっかく
ここまで来たからには行きたいと
思うんだけど…どうかな?」
「ハイ!行きたいデス!」
好奇心の塊のようなナヲさんが
勢い良く手を挙げる
「奥の院て…何があるの?」
「神様が本当に居るところ」
「え~?本殿じゃないの?」
「本殿は出張先なんだって…ほら
お年寄りとか子供とかさ…上まで
行けないじゃん…だから神様にみん
なが来られるところに来てもらって
るんだって」
僕は上まで行ってみたいと思った
「行きます…」
「鎖場面白そうではないか」
「では決まり!」
本殿の裏手は切り立った崖
その上に足場と手すりが見えた
「実は私も奥は初めてなんだ」
先輩が言う
本殿の左に道標があった
《奥の院》と書かれ矢印がある
「こっちだね」
先輩が先に立ち三人を手招きする
僕たちはその後を付いて
更に急な石段を崖の上に向かって
歩き始めた