おやすみ
食事を終えた妻が口を開く。

「ねぇ、ずいぶん前から聞きたいことがあるの。」

「ん~。何?」

ニコッと笑って、

「浮気したでしょ?」

「……。」

あんまりにも俺を真っ直ぐ見て聞くから、俺も妻を見つめて答える。

「…分かってたんだ…。」

「ちょっとだけ。」

少し間をあけて、

「あの時、…どうして俺に…今みたいに聞かなかった?」

「ん…きっと、怖かったんだと思う。一人ぼっちになるのが怖かった…。」

そう言葉に変えながら、この家を見渡した。

「…。」

「―のかもしれない。」

と笑顔を見せて、

「今の私なら、捨ててやるんだけどね。」

と付け加えた。

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