獅鷲
コンコンとノックをして中にいる相手の返事を待つ。
「どうぞ」
男らしい低い声のせいか、唯の返事にさえも威厳があるように感じられる。
また、武者震いが強まる。
「失礼します」
ドアを開けると共に見えてくる男にあたしは驚きを露わにした。
「…春樹」
行き場を無くしたあたしを唯一人、無言で助けてくれた、あたしの恩人。
「偽名で入学とは関心しないなぁ…。しかも俺の名前を捩(モジ)るとはいい度胸じゃねぇーか」
意地悪そうに口角を吊り上げて笑う奴は普通の女の子が見れば一発でノックアウトだろう。
佳賀美 春樹‐カガミ ハルキ‐
それが彼の名前だ。
出会って数日しか経ってないっていうのに彼はずっと前からあたしが居たように接し、理解してくれた。
そんな彼だからこそ、あたしもすぐに本当の自分を彼に出せたんだと思う。
「ア、アハッ…?」
ごまかす様に笑ってみたが、やっぱりダメみたい。
お願いだからその冷めた顔止めて!