ある聖夜の物語《短》
ワインの残りが三分の一になったころ、体が熱くなって視界がぼんやりとしてきた。
ちょっと酔っ払ってきたな、と思いながら隣に座るタキの肩に頭を乗せると、タキは慌てる気配もなく黙って肩を貸してくれる。
「なあ、飲み過ぎじゃね?」
そしてそれが酔いが回っている合図だと知っているタキは、心配そうな声を頭の上から落としてきた。
確かに今日はいつもブレーキ役をしてくれているクラスメイト達がいないから、飲み過ぎたと思う。
「んー…まだ飲める!」
だけど自分が酔っているという自覚はあるし、何を話しているのかも理解出来ている。
今までの経験からしてまだいけると踏んだ私は、紙コップに残っていた赤ワインを一気に飲み干す。
空になった紙コップをタキの胸の前辺りに差し出すと、タキは私の枕になっている肩を動かさないように赤ワインを注いでくれた。