ダークエンジェル

医者の話はこうだった。


カイルは右足に何か金属製の破片が食い込み、
膝辺りから切断しなければ命に関わるらしい。

まだ意識が無い、と言っているが、

実は麻酔で眠らせているという事だ。

意識が戻れば自分の状態を知る。

現実を知れば、どのように思うか。

ハンサムでまだ若いカイルがどんな反応をするか。

周りの者は気の毒で話し辛いらしい。



「私は医者として伝えないわけには行きませんが… 

私は2年前、カイル様に助けられ、
この病院を任されました。

まだ少年のように輝いていたあのカイル様が… 

会長になられ、
これから羽ばたくあのカイル様が義足とは… 

ご存知かも知れませんが、
財団と言う言葉を使っていますが、
その実は完全な多国籍企業、

従業員同士が熾烈な争いをして自分の業績を上げようと躍起になっています。

先代から引き継がれてきたものです。

しかし、カイル様になってその雰囲気も変わる、
と多くの従業員が期待していますのに… 
カイル様のお心が心配です。

あの方は真っ直ぐで、賢くて、
何でもスムーズに対処なされます。

でも、時としてとても弱いところがあるのです。

人前で涙を流す事はありませんが、それがかえって… 」


「ええ、人前で感情を出さない方ですので… 

それに… 必死で隠してはいますが、

実際はとてもクールなところもおありなのです。

一度だけ悔しそうに… ガクトの遺伝子か、と言って、
ご自分の体を傷つけようとされました。

カイル様の期待を裏切った社員への処置で… 
その時は腹立ち紛れでしたが、

すぐに後悔されて… 

私は話を聞かれたカイル様がどのような反応をされるかが心配なのです。」



医者とエルザは、カイルの心を案じているようだった。

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