ダークエンジェル

それから2人はエルザと共にカイルの部屋へ向った。

麻酔の効いているカイルは
無防備に、幼子のような顔をして眠っていた。



「そう言えば、物々しい警戒でしたが… 」



信秀が思い出したように声をかけた。



「あ、はい。すみません。
実は、昨日も狙われたものですから。」


「狙われたって、誰に… 」



その頃には耳も英語に慣れたリュウ、
父より先に言葉が出た。



「はい。何者かが点滴液を摩り替えたのです。
勿論誰がそのようなことをしたのかは突き止めました。

数ヶ月前からいた看護師でした。
でも、分った時には姿を消していました。」


「誰がそんな事をさせたのですか。
カイルを狙ったと言う事ですね。」



父も眠っているカイルを見て、
16年前の怒りもこみ上げているようだった。



「それが… はっきりしないのです。

ご存知のように、今までは醜い争いが… 
ここだけの話ですが、
そもそも創始者のガクト・ハワードと言う人の人格に問題があったのです。

彼を恨んでいる人は数え切れないでしょう。
4年前に亡くなりましたが。」


「腹違いの義兄たちがカイルを恨んでいるという事ですか。」



父は眠っているカイルを見て… 

16年前の苦い思いがよぎっているのか、
頭をフル回転させているようだ。



「いえ、カイル様はその前後からやっと表舞台に登場してきたぐらいですので。

長男のドートンは43歳、
次男のソージャは39歳、
3男のピクトルでも31歳、
皆さんかなり年齢差がありました。

そして皆無能なくせに欲張りばかりでした。

だからガクトに踊らされ、かなりの悪業も、
勿論合法的にですが、
かなりひどい事もしていたようです。

ええ、彼らが死んでも、涙を流すものは一人もいません。

ビルに爆破物を仕掛けたソージャも、
あの時爆風で、45階の窓から落ちて死にました。

ええ、カイル様や他の社員たちと同じ部屋にいたのです。

あの人は自業自得。」



そう言うエルザの顔は… 

そのためにカイルがこんな目に、と言う様に怒っていた。
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