ダークエンジェル
そしてすぐに話を続けた。
「だから、私たちは残ったのがカイル様だったことをとても喜んでいるのです。
でも… そのカイル様にこのような残酷な事が… 」
「皆死んだのなら誰がカイルを狙っているの。」
カイルが狙われた、と聞いたリュウは、
話が逸れているエルザに催促している。
「あ、はい… ですから心当たりがないのです。
今、全力で探しています。
なるべくなら警察沙汰にはしたくありませんので、
うちのセキュリティ部門総動員で、
可能性のありそうな存在を探しています。」
「どういうことなの。」
「ええ… ガクトは堂々と妻を取替え、
傍若無人にやっていましたが、
息子さんたちは気が弱いところがあり、
父親を恐れていました。
だから公には愛人云々の噂もありませんでしたが、
秘密裏にはどんな事があっても不思議ではありません。
皆さんお金に不自由はしていませんでしたから。
戸籍上はドートンには大学と高校生の娘が2人、
ソージャは10歳の双子の男の子、
ピクトルは7歳と5歳の女の子と2歳の男の子ですが…
いずれも妻とは家庭内離婚のような状態だったらしく、
奥さんたちはそれなりのものをもらえば、
喜んで子供共々無関心の生活をしています。
ですから今、彼女たちからも聞きだしています。
はっきり聞かなくても、妻の勘、というものもあるでしょうから。
こうして狙っていると言う事は、
絶対に財産を狙っている何者かがいるはずです。」
「ふーん。そうなんだ。
カイル、かわいそうだね、父さん。」
それはカイルの事を知ったリュウの本心だった。
自分は父と2人、
他人に言われなければ、
それが寂しい事だとも気づかなかった。
余計な家族が増える事の方が嫌だった。
カイルはどんな生活をしてきたのだろう。
自分には優しく接してくれた。
しかし、父はとても気にしている。