ダークエンジェル

「カイル、悲しいけど、
僕はカイルがこうして無事だっただけで嬉しいよ。

足が半分なくなっても命が助かるなら、
手術を受けてよ。

カイルが教えてくれたから、
父さん、こうしてすぐに退院できるようになった。

だから父さんがニュースを見て、すぐに来たんだよ。

父さんもカイルの事覚えていたよ。
写真も持っていた。

カイルが持っているのと同じもの。」



リュウは心をこめて話しているつもりだったが、

カイルは心を閉ざしているように、
何も反応しなかった。

カイルがリュウにこんな態度をするとは… 

リュウは戸惑うしかない。



「カイル、私もカイルに会えて、
言葉に出来ないほど喜んでいるよ。

爆破のニュースを見た時は信じられなかった。

龍彦からカイルが無事でいることを聞き、
私の所に来てくれていたことも知り、
その内に会いに行こうと思ってはいた。

私は16年前、
ソフィアがあんな事になって、
君を探せなかった。

しかしソフィアは龍彦を残してくれた。

それから家族4人で暮らそうと思っていた家で龍彦と二人で生きてきた。

もっとも、4年前に再婚して… 
龍彦に反抗されながらもやっと家族の形を作っていた。」



こんどは父がカイルに話しかけている。

父も、やっと会えたカイルに降りかかっている不幸。

いたたまれない気持が伝わって来るリュウだ。



飛行機の中で、
信秀はカイルを実の子のように話していた。

自分のところに来てくれた、と聞き、
リュウには言わなかったが、どれだけ嬉しかったか… 

それがいきなり足を切断とは… 
信秀こそ戸惑っていた。

そして、やはりカイルは自分の心を閉ざして生きてきたのだ、
とも感じていた。

いつもこんな風に、自分の心を隠して生きていたのか、

と思えばあまりにも不憫ではないか。

怖いのなら涙を流して、

自分の前で泣いても良いんだよ、と言ってやりたい。
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