ダークエンジェル

「そんな事、分かりません。

僕は、あの人たちは好きではなかったから気にした事も無かった。

父が起きてから聞いてください。

父をあんなにしたトラックの運転手、捕まえたのですか。」


「いや… それは… 
我々は高倉美由紀さんの親族を探していますので… 

高倉さんはあの家で君と二人で暮らしていたのですね。

君のお母さんは。」


「そんな事、わざわざ聞かなくても、
父が再婚したと言う事で想像は着くのではないですか。

警察は意地悪なんだ。」



そう言って、力が消えたようにうつむいたリュウ。

それは、
こんなに悲しいのにこの警察はつまらない事を言って、
僕を悲しくさせる、

と態度を表しているリュウ。


それを聞いていた看護師たち、

明らかにリュウをかばっているのか、

冷たいオーラを放って警察官を見ている。



「いや、そんなつもりは… 分かりました。
今日はこの辺で… 」



よほど居づらくなったのか、
警察官たちはそそくさと帰っていった。




「なあ、リュウ。さっきの話… 
お前、どう思う。

あの人は何のためにそんな偽装をしたんだ。

お前の親父さん、おかしいとは思わなかったのかなあ。」



水嶋は今の警察官たちの話を思い出している。



「そんな事、分からない。
僕は初めから受け入れていなかった。

だけど… 父さんは嬉しそうだった。

だから僕は… 仕方が無いと思っていただけ。」


「そうか。そうだな。警察の仕事だ。」



わり切れない気持のまま、

水嶋はリュウの気持を思いやり、
その話は自分の中に閉じ込めた。

リュウが初めから義母さんたちを嫌っていたのは分っている。





それから5日後、

信秀の容態は変わりなく、

水嶋が毎晩、11時まで病院に、と言う日が続くようになった頃、

素高紀行と言う名刺を持った弁護士が訪れた

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