ダークエンジェル
弁護士…
そう言う職業があるのは知っているが、
高校生の二人にとって実際に会ったのは初めてだ。
リュウより水嶋のほうが緊張して相手を見ている。
「私は5年前から高倉信秀氏に依頼されている弁護士です。」
「弁護士って… 父さんが何か… 」
「はい。高倉氏から、万が一の時のための遺言書を初め、
彼の所有物の全てに関することを任されています。」
そんな事を聞いてもリュウは納得出来なかった。
遺言書は何となく分かるが…
所有物の全て、と言ってもあの家ぐらいではないか。
確かに杉並のあの辺りは、
最近では高級住宅地と呼ばれているかもしれないが、
高倉の家は昔のまま、所々いたんではいるが、
リュウはもちろん、父だって全く無関心だったはずだ。
大体父が何故弁護士などに依頼したのか、
全く分からない。
そんな話、聞いたことが無かった。
リュウは不審感を抱いた顔をして、弁護士から目を逸らした。
「あの… 弁護士さんは高倉美由紀さんのことはご存知ですよね。」
そんなリュウに代わって水嶋が声をかけている。
弁護士なら、自分たちが知らないことでも知っているはずだ。
「はい、再婚相手の方ですよね。
お気の毒に、その方と二人のお子さんはだめだった、とか。
いま、ここに来る前に担当医と話を…
でも、驚きました。
その美由紀と言う奥さん、戸籍が無かったようですね。
ああ、彼女の子供たちも、とか。」
「らしいです。だから僕たちも…
あ、僕はリュウの高校のテニス部で…
簡単に言えばリュウのことを弟のように感じていますから、
こんな時はなるべく一緒に、と、こうして来ています。」
なかなか上手い言葉が見つからない水嶋だが、
自分もリュウと一緒に話を聞く権利がある、
と言う様な顔をして素高弁護士を見ている。