ダークエンジェル

「資産って、あの杉並の家の事でしょ。」



父とそんな話はしたことが無かったが… 
リュウが思いつくのはあの家ぐらいしかない。



「ええ、それもありますが、
昔はおじいさんが不動産屋をしていたらしく、
亡くなった時に整理して、
千代田区のビルを買い取り、

今ではその家賃収入、かなりのものになっています。

ええ、その管理も私に依頼してくれました。

そのお陰でアメリカでのんびり暮らせた、とか言っていましたよ。
若い頃の事でしょうね。」



リュウは父がアメリカで日本文化を教えていた事、

その時にソフィアを愛し自分が生まれた事、

などは聞いていたが、
父がそんなビルを持っていたとは聞いたことが無かった。

しかし、そんなことは何も関係は無いはずだ。




「病院関係者は龍彦君に伝えにくいらしく、
私がさっき聞いてきましたが、

高倉氏の容態は… 多分このまま、
いや、しばらくは… 」



その言葉でリュウは顔色を変えた。

自分には伝えにくいって… 



「どういうこと。」


「ああ、もっと分かるように話してくれないと分からないぞ。」



水嶋も青ざめた顔をして弁護士を見つめている。

とにかく、これ以上リュウを悲しませたくないのが
水嶋の気持だった。



「多分お父さんは、
しばらくはこの植物人間的な症状が続く可能性がありそうです。

事故の衝撃でたまにあるらしいです。

意識が戻るのは数週間後か数ヵ月後、
もしくは数年後、とか… 
いろいろらしいですが… 
家族は気長に待つほかは無いらしいです。」



本当に、素高も幼子のようなリュウには話しにくいらしく、

かなり緊張した顔をして告げた。
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