ダークエンジェル
「じゃあ、父さんはずっと病院で… 」



リュウは泣きそうな顔をしている。



「ええ、いろいろな医療器具や点滴をしていますから、
それしかありません。

それで龍彦君、君はどうする。
さっきも話したように君には資産がある。

病院と交渉してもっと良い部屋で、
お父さんと一緒に暮らすかい。

君の気配が感じられたほうが、
お父さんも回復の可能性が早いかも知れないし、

君もその部屋から学校へ通うほうが良いと思う。

家政婦を一人雇うけど… 
君が賛成してくれるなら、それで話してくる。」


「うん… そうしたい。
きっと父さんは、こういうことがあった時のために弁護士を雇ったんだ。

先輩もそう思うでしょ。」



素高の話は、リュウにとって嬉しいことだった。

父が退院できるまで、
父の側を離れるつもりはなかったが、

それでも、今の生活は落ち着かなかった。

自分の居場所が… 
夜だけのベッドスペースしかない。

それでも、
病院に自分の部屋を作って、
家政婦を雇うなんて… 

そんな考えは思いつかなかった。



「ああ… だけど。すごい金がかかるんじゃあないか。」



確かに良い案、リュウにとっては最高だ、が… 





「大丈夫です。
あのビルの毎月の収入だけでもかなりのものですから。

あ、それから、3人の遺骨、どうしましょうか。
おじいさんたちが入っているお墓に入れますか。」


「そんな事、分からない。」


「そうだなあ… 戸籍を騙していた人たちだから… 

やっぱり、親父さんが回復してからにしたほうが良いぞ。
弁護士さん、どう思います。」


「そうですねえ。夫婦関係のことは分かりませんが、

確かに戸籍を誤魔化していたなんて、
何か悪意をと言うか作為を感じますねえ。

じゃあ、どこかのお寺に預かってもらいましょう。
お寺ならお経をあげてくれるでしょうし… 

高倉家が檀家になっているお寺でも良いですか。
それなら明日にでも行ってきます。」

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