ダークエンジェル

父はとても嬉しい言葉を、当然のように出した。

カイルも一緒… 



「だから父さんは急いで結婚証明書を作り… 
ああ、父さんは万全の準備をしていたんだ。

あの杉並の家で親子4人で暮らすことを夢見ていたよ。」



親子4人… 勿論父とソフィア、カイルと生まれてくる僕だ。

そう思うだけで心が熱くなっているリュウ。



「でも、カイルの戸籍は… パスポートを作るには… 」


「それはソフィアが… 
偽装だが分からないぐらいきちんとしたものを持って来ていた。

母子家庭で暮らしていたが日本人と知り合って、
日本で暮らす、ということだ。

まあ、アメリカは日本より格段とシングルマザーが多いからな。」


「ソフィアってそんなことが出来たんだ。」


「ああ、父さんではとても無理だが… 
とにかく頭の回転が早く、知識も豊富だった。

人を上手くコントロールする能力も… 上手かった。

しかし、あの時… 役所から出て、

明日はアメリカともお別れだ、と思っていた矢先にあの事故が起きた。

あの時は… 父さんも一緒に死んでしまったようだった。

しかし、いきなり医者が興奮した声を出し、
赤ん坊が動いた、と言ったんだ。

ああ、とても助からないほど小さい赤ん坊だったが… 

一年後には普通並みの赤ん坊に成長して… 

親子4人の夢は崩壊してしまったが、
龍彦がこうしているだけで父さんは生きて来られた。」


「カイルは。」



そうなってくれば気がかりなのはカイルの事だ。

カイルは自分たちの家を知っているようだった。

現実に父が入院していた病室にまで来てくれた。

しかし、父の言葉は… 



「父さんはソフィアがどのように連絡をしてカイルを呼ぶのか、分からなかった。

いや、その時、カイルがどこにいるのかも知らなかったんだ。

多分、ハワードの屋敷だろうが、
まさか会いに行くわけにも行かないだろ。」



そう言って父は苦しそうな表情をした。
< 97 / 154 >

この作品をシェア

pagetop