ダークエンジェル
父はとても嬉しい言葉を、当然のように出した。
カイルも一緒…
「だから父さんは急いで結婚証明書を作り…
ああ、父さんは万全の準備をしていたんだ。
あの杉並の家で親子4人で暮らすことを夢見ていたよ。」
親子4人… 勿論父とソフィア、カイルと生まれてくる僕だ。
そう思うだけで心が熱くなっているリュウ。
「でも、カイルの戸籍は… パスポートを作るには… 」
「それはソフィアが…
偽装だが分からないぐらいきちんとしたものを持って来ていた。
母子家庭で暮らしていたが日本人と知り合って、
日本で暮らす、ということだ。
まあ、アメリカは日本より格段とシングルマザーが多いからな。」
「ソフィアってそんなことが出来たんだ。」
「ああ、父さんではとても無理だが…
とにかく頭の回転が早く、知識も豊富だった。
人を上手くコントロールする能力も… 上手かった。
しかし、あの時… 役所から出て、
明日はアメリカともお別れだ、と思っていた矢先にあの事故が起きた。
あの時は… 父さんも一緒に死んでしまったようだった。
しかし、いきなり医者が興奮した声を出し、
赤ん坊が動いた、と言ったんだ。
ああ、とても助からないほど小さい赤ん坊だったが…
一年後には普通並みの赤ん坊に成長して…
親子4人の夢は崩壊してしまったが、
龍彦がこうしているだけで父さんは生きて来られた。」
「カイルは。」
そうなってくれば気がかりなのはカイルの事だ。
カイルは自分たちの家を知っているようだった。
現実に父が入院していた病室にまで来てくれた。
しかし、父の言葉は…
「父さんはソフィアがどのように連絡をしてカイルを呼ぶのか、分からなかった。
いや、その時、カイルがどこにいるのかも知らなかったんだ。
多分、ハワードの屋敷だろうが、
まさか会いに行くわけにも行かないだろ。」
そう言って父は苦しそうな表情をした。