汚レ唄



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改札を抜け、歩いていると、背後から声がかけられた。



「もっしもし、そこのお嬢さん♪
お兄さんと一緒に遊びませんか?」



この声は……

あぁ、やっぱりダメだな。



この声を聞くと一気に安心する。

私は足を止めることなく歩き続けた。


すると、声をかけてきた人は隣までやってきて歩幅をあわせて歩いてくれる。



「陽菜ちゃん?無視ですかぁ?」

「なに?お兄ちゃん」


チラッと隣を見ると、何だかご機嫌なお兄ちゃん。


そんなお兄ちゃんの楽しさが私にも伝染していくみたい。

私まで嬉しくなる。



「ちょっとちょっと!!
お兄ちゃん、困ってんのよ~……」

「……なに?」

「お金貸して♪」

「…………」



お兄ちゃんはニッコリ悪魔のような笑みを見せると手のひらをこちらに向けてきた。



「なんで?」


今すぐに財布を渡してもいいんだけど、自然体な妹を演じるために焦らしてみる。


「コンビニでお菓子買いたいんだけど、財布をさ、職場に忘れちゃったんだよね」

「………………仕方ないなぁ」



別にいいんだ。貸すことに抵抗なんてない。



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