汚レ唄
「なになに??」
「まだ内緒~♪」
なんだろう?
だけど、こんなにお兄ちゃんが嬉しがることだもん。
すっごい良いことだろうなぁ。
彼女と別れたとか?
……って、それは私の嬉しがることか。
じゃあ何だろう?
昇進??
……結婚??
それだと嫌だなぁ。
「陽菜?どれにする??」
笑ってるお兄ちゃんの顔を見たらどうでもよく思えてきた。
お兄ちゃんの顔を見てるだけで、今はそれだけでいいや。
今はこの時間を楽しみたいな。
この時間が永遠に続けばいい。
「じゃあコレ」
私はチョコレートを選んだ。
甘い甘いチョコレート。
胸の奥からしんみり甘く染まるチョコレート。
「よし♪じゃあ買ってくるから、待ってろ」
レジに向かう後姿。
自分に似合わない財布を恥ずかしげに出すお兄ちゃん。
愛しい人。
少し猫背な背中。
未だに寝癖のついた髪。
全てが大好き。
───── だけど、お兄ちゃんが上機嫌な時は要注意だった。
いつだって、楽しい時間が終われば堕ちていくだけだったじゃないか。