汚レ唄


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「ありがとうございましたー……」


背に浴びるやる気のない店員の声。



「うわぁ〜……なんか雨降りそうじゃねぇ?」


前を歩くお兄ちゃんが空を見上げた。

つられて私も空を見る。


灰色の空。



「本当だ。雨降りそう……」

「急いで帰るぞ」



お兄ちゃんはコンビニの袋を持ったまま少し早足で歩く。


私はお母さんの後ろについていく小さな子供のように、お兄ちゃんの後をついて歩いた。





人通りの少ない道。


家に帰るまで誰ともすれ違うことなかった。





家の中に入ると、お兄ちゃんは我先にと部屋へと急いでいった。


振り返ることも、話しかけることもなく。



私は、やっぱりリビングへ行き、お母さんに帰ってきたことを知らせる。

「ただいま」

「おかえり〜。こんな時間に帰ってきたの珍しいね」



お母さんはコーヒー片手にサスペンスを見ていた。


カバンを下ろしてお茶を飲む。



そういえば、いつも学校が終わったら遊んで帰ってきたから、こんな時間に帰ってくるのは久しぶりかもしれない。


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