汚レ唄
「ツンツンして近寄るなオーラを出しているけど、本当は、そんな自分ごと受け入れてくれるご主人様を待ってるって感じ?」
「へーへー」
「……あたしはご主人様になれなかった。
蒼の待つ人はあたしじゃなかった」
「…………」
急に羽香がらしくない声を出す。
こんなにおっさんだらけで、ラーメンをすする音しかしないラーメン屋でなぜかこんな深刻な話。
「あたしが何も気付いてないと思った?」
「…………いや」
「蒼を見てたら嫌でもわかるよ。蒼ってば、笑っちゃうくらいバレバレなんだもん」
「…………」
「少なくともあたしは、蒼のこと見てたから。蒼のご主人様は麻緋ちゃんだってわかったけど……
でも、どうして麻緋ちゃんなの?」
「…………」
何も言えなかった。
今、何か言ったとしても……それは、なんだか薄っぺらなものになってしまうような気がして。
ただただ、ラーメンを冷まして食う。
それしか、俺には出来なかった。