汚レ唄
しばらく沈黙が2人の時間を通り過ぎた。
「…………って、あたし何言ってんだろね。はぁ〜
……ゴチになります♪」
何事もなかったような調子でご馳走様と手を合わせる羽香。
本当に俺がおごるんだ……。
「まっいいけど」
伝票を持ってレジに向かう。
「よろしく〜♪」
羽香は笑って肩を軽く叩くと、先に店から出て行ってしまった。
おつりをもらった後にふと、ポケットから携帯を取り出す。
が、やはり麻緋からは何も来ていない。
卑怯な手を使って手に入れた結果がコレだった。
もう二度と麻緋からは連絡が来ないのかもしれない。
当たり前だけど。
そうなっても仕方ないことを俺はしてしまったけど……。
テレビの中に映る麻緋しか見れないことがとても悲しい。
他の奴らと同じようにテレビの中でしか会えないのはキツイ。
こんなことなら、あのとき逃がせばよかった。
あんなことしなければよかった。
……今更、後悔しても遅いけれど。