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見せ場を皓に丸々取られてしまったな…。

苦笑いしながら、ラルフはゴーグル越しに目を細める。

「晴、分隊の訓練はその為のものだったんじゃないのか?…部隊単位での戦闘や、行軍の際のフォーメーション…お互いの死角を補い合って、カバーし合う…効率よく戦う為だけじゃない。『部隊の仲間を守る為』だ」

戦闘に特化した組織のように思われがちな軍隊だが、彼らは仲間意識や信頼関係を何よりも重視する。

『ワンマンアーミー(一人だけの軍隊)』という言葉があるが、現実には存在しない。

足りない所を補い合ってこその仲間。

庇い合ってこそ、部隊は成り立っているのだ。

厳しい訓練は、勿論自分の生存率を高める為である。

だが同時に、高い能力を身につける事は仲間の足を引っ張らないようにし、ひいては仲間を守る事に繋がるのだ。

「さてと、散歩はもういいだろう」

ラルフも晴に歩み寄り、彼の肩を叩く。

彼がもう逃げようとしないのを確認して。

「こちらラルフ」

彼は90式歩兵強化装備に備え付けられた小型無線で連絡を送った。

「咲月 晴の身柄を確保。これより基地に帰投します」

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