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横須賀基地宿舎。

パァンッ!と。

平手が音高く響く。

…晴は赤くなった頬を庇いもせず、俯いていた。

「何故殴られたかは説明の要もなかろう」

時雨は厳しい表情で晴を見据える。

今にも射抜き殺してしまいそうなほどの眼差しだった。

「咲月、貴様の行動は『部隊の全滅』を促す行動だ。勝手な真似をする兵は私の部隊には要らん。『不死身の時雨』の異名に傷がつく」

「し、時雨教官、それは幾ら何でも…」

あまりに冷たい言葉に、奈々が口を挟む。

が、それを無視して時雨は続ける。

「脱走はどこの軍隊でも重罪だ。場合によっては銃殺刑にかけられる。たとえ貴様が徴兵によって渋々入隊した兵だとしてもだ」

『銃殺刑』

その言葉に晴が、そばで聞いていた仲間達が身を震わせた。

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