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「が」

時雨の言葉は更に続く。

「咲月、貴様は数少ない完全抗体の持ち主だ。加えて現在兵士の数は極めて少ない。軍規を乱す者には厳しい罰則が必要なのだが、それすらも儘ならぬほどに事態は逼迫しているのだ。戦時下の特別権限で、銃殺刑は勘弁してやる。感謝しろ」

「はぁー…っ」

何故か皓の方が、命拾いしたように大きく溜息をついた。

「だが無罪放免という訳にはいかんな。咲月、貴様には一週間の営倉入りを命じる。自分のしでかした愚かな行為を反省し、じっくりと甘えた根性を叩き直せ」

ピシャリと言ってのけ、時雨は振り向きもせずに歩いていった。

彼女が立ち去った後。

「よかったなぁ、晴!」

「もう~っ、心配したよぉ!」

「何で一言相談してくれなかったんだ!」

皓が、奈々が、綾斗が、晴のそばに駆け寄る。

「あぁ…すまなかった」

営倉入り。

言うまでもなく懲罰だ。

にもかかわらず、晴はこぼれる笑みと感涙を抑える事が出来なかった。

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