alternative
一人きりの寒々とした一夜が明け、営倉の中で朝を迎える。

「……」

身を起こすと一番に目に入るのは鉄格子。

気が滅入る。

そう思っていると。

「よっ。よく眠れたか?」

その鉄格子の向こうに見慣れた顔があった。

綾斗だ。

手には二人分の朝食の盆。

「朝食をな、運んできたんだ」

「…何で二人分?」

不思議に思って問いかける晴の質問には答えず。

「へぇ~、思ったより営倉って設備いいんだな。もっと寒々としているのかと思った」

綾斗は一つの盆を晴のいる営倉の中に差し入れ、もう一つを床に置いて自分も座る。

「いただきますっ…と」

どうやら彼女は、ここで朝食をとるつもりらしい。

一人での食事は味気ないものだ。

食事の時くらい仲間と一緒にいたいだろう。

綾斗なりの配慮だった。

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