微熱-関谷side-
……あいつの友人?一瞬誰の事か分からなかった俺は、多空がパチリと瞬きした顔でやっと誰の事か思い出す。ああ、あの女狐か。確か、一度祝賀会か何かで一緒になった女。
値踏みする様な視線、気に食わないとはっきりと意思表示する態度、プライドの高そうな女を思い出して息をつく。あの手の女は苦手だ。そして正直、あの時の事は思い出したくない。
普段とは違う紗織を見て、確かに俺は綺麗だと思ったのに、言葉が見つからねーし。ドレスから伸びる白くて長い手足を、誰にも見せたくないと思う自分にも調子狂う。…そういえば、多空のやつ、あっさりとあいつを褒めたな。
ムカつく。殴っとくか?
「…司?」
多空の透明な声で思考をやめる。怪訝な顔をする多空は
「まだ調子悪い?」
と、今度は本当に心配したような声を出した。