「春夏秋冬」


「さ、アルバイトしようか!」

「澤口さんは元気だなぁ。」


彼は、変わったのだ。あの夏休み以来。

少しずつだが、勇気を出して生きていけるようになったのだ。これから、どんな事があろうとも。どんな目にあおうとも。きっと乗り越えて見せると、そう自分に誓ったのだった。


しばらく、時間が流れる。二人は、一緒に通学路を歩く仲となったのだった。そして、今日も。

となりには笑っている女の子がいる。

名前も、経歴も知っている。

知らない仲ではない。

もっと仲良くなりたい、とは思っていた。

しかし、どうしてもそれが出来ないのだった。



あの時。

進路を決めたあの時に、もう戸惑う事はやめようと思っていた。

勇気を出して、前に進もうと決めた、誓ったはずなのに。

それなのに、最近は友達の女の子、名前を澤口と言ったが、その少女に話しかけることが出来なかったのだった。


心情の変化だろうか。分からない。


とにかく、以前とは何か、どこか違った感情が芽生えているのに気がつかないで生きていた。


高校生になって。彼はアルバイトを始めていて。自由に使えるお金が増えていき。それでも勉強もそこそこにやって高い順位を手に入れていて。将来の夢も決まっていた。

なんになりたいか、自分の胸の中に聞いてみればそれはすぐに分かる事。

どうしたいのか、何が出来るのか、これからどうなるのか。それは簡単に分かる事だった。

過去があり、今がある。

今が在るから、未来があるのだ。

時間を大切に。そうやって生きていたのだ。


しかし、今。

いつも一緒に帰宅する少女の顔を見るとどうにも落ち着かなくなってしまうのだった。


どきどきしてみたり、声が上ずったり。

いつもとは違う自分がいるのだった。



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