「春夏秋冬」


ともかく、誕生日は海に行くことになった。

のんびり出来ればそれで良かったのだが、彼女の言葉尻からして、それ以上を期待してしまうのだった。



そうと決まればお金を準備しなければならない。

全額出せ、と言われた訳ではないが、それなりにお金が必要なのだ。

貯金をしていなかった事を後悔している。


夜遅く、働ける時間いっぱいまで働いてお金を少しずつ貯めていった。

勉強が手につかなくなり、いつも寝不足になってしまって。授業中に眠ってしまう事も度々だった。


でも、これもあの少女と海に出かけるために。


日帰りでもなんでも、とにかく遊びに出かけられて彼女を喜ばせることが出来たならそれは幸せなことなのだと思えるようになっていた。


貯金残高が少しずつ増えて行くのを見ていると、なんだか嬉しい気分になっていく。


これで、彼女を喜ばせることが出来るかもしれない、からだ。


そして、試験が始まった。

以前よりも成績は落ちてしまったが、家族は何も言わなかった。


母親が事情をそこはかとなく説明してくれていたのだろう。

働いているから、しかたがない、今度の試験で頑張りなさい、と、それだけ言われた。

怒られてしまうのかな、と思っていたが、そうでもないらしい。それはとても喜ばしい事だった。


全て、上手くいっている。これで順調なのだ。


しかし、どうにも心の隙間は埋められずにいたのだった。

何かが足りない。

これよりも、もっともっと大きな幸せ。それが欲しい。そう思うようになっていた。


そして迎えた彼女の誕生日。

駅前で待ち合わせをして、少し速めに到着したのだが。時間を潰そうと考えていると、すぐに彼女がやってきた。



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