「春夏秋冬」
少女は行ってしまった。
少年は考えた。
キリギリスは、不幸な死に方をしたのではなかっただろうか。そうでなければ、あれは一体どういう物語だったのだろうか?
分からなくなってしまったのだった。
ありと自分を重ね合わせていただけに、そのショックはとても大きいものだったのだ。
夏休みは勉強していた。
学校の取り組みとして、勉強合宿をする、と言っていた。
もちろんそれに参加した。家で勉強するよりも、ずっと捗りそうだったからだ。だから、申し込みを済ませていた。
そして、夏休みがやってくる。
暑い夏。
蝉の声がする。どこからも聞こえてくる。短い人生を謳歌している。
人間も、そうだ。誰かが言っていた。
「人生は何かをするには短すぎるが、何もしないで暮らすには長すぎる。」と。
少年は何かを残したいわけではなかった。長い人生だったが、このままでいいのかどうかも、分からない。何も分からないのだ。
学校の勉強合宿の時間が迫ってきている。親にそのことを告げて、車で送ってもらう事にした。
何気なく外を見ていたら、ノートを貸した少女が歩いているのを見つけた。
もしかしたら、同じ合宿に出るのかもしれない。
追い抜いていってしまい、それを確認する事はできなかったが、とにかく同じ目的地ならばどこかで会えるだろう。そんなことを考えていた。
車から降りて太陽を見た。
眩しい。
日に焼けてしまうだろうな。
そんなことを考えて学校の中に入った。
少しだけ、ひんやりとした空気があったが、すぐに体温は上がってしまい、今年の夏も暑い、ということを思い知らされたのだった。