「春夏秋冬」


少女は行ってしまった。

少年は考えた。


キリギリスは、不幸な死に方をしたのではなかっただろうか。そうでなければ、あれは一体どういう物語だったのだろうか?

分からなくなってしまったのだった。

ありと自分を重ね合わせていただけに、そのショックはとても大きいものだったのだ。



夏休みは勉強していた。

学校の取り組みとして、勉強合宿をする、と言っていた。

もちろんそれに参加した。家で勉強するよりも、ずっと捗りそうだったからだ。だから、申し込みを済ませていた。


そして、夏休みがやってくる。


暑い夏。

蝉の声がする。どこからも聞こえてくる。短い人生を謳歌している。

人間も、そうだ。誰かが言っていた。

「人生は何かをするには短すぎるが、何もしないで暮らすには長すぎる。」と。


少年は何かを残したいわけではなかった。長い人生だったが、このままでいいのかどうかも、分からない。何も分からないのだ。



学校の勉強合宿の時間が迫ってきている。親にそのことを告げて、車で送ってもらう事にした。

何気なく外を見ていたら、ノートを貸した少女が歩いているのを見つけた。

もしかしたら、同じ合宿に出るのかもしれない。

追い抜いていってしまい、それを確認する事はできなかったが、とにかく同じ目的地ならばどこかで会えるだろう。そんなことを考えていた。



車から降りて太陽を見た。

眩しい。

日に焼けてしまうだろうな。


そんなことを考えて学校の中に入った。


少しだけ、ひんやりとした空気があったが、すぐに体温は上がってしまい、今年の夏も暑い、ということを思い知らされたのだった。



< 5 / 24 >

この作品をシェア

pagetop