「春夏秋冬」
人数はそれほど多くなかった。
しかし、この数少ない人数の中にあの少女もいた。何を勉強するつもりなのかは分からない。
しかし、少年はあの少女の考え方に触れていたかった。新しい価値観というのは、いつだって刺激的なのだ。不快かどうかはさておくとしても、だ。
バスに乗り込んでしばらくして。山のほうにやってきていた。
ここで一週間だけ勉強するのだ、と思うと少しだけ気分が良くなる。
将来のことを考えている、というアピールにもなったし、自己暗示の効果もあった。
できる。
大丈夫。
自分は、前に進んでいる。
そう思うことで自分を保っていた節があったかもしれない。
それぞれが勉強したい科目に分かれていく。
少年は化学を勉強しようと思った。苦手だったのだ。化学を勉強しよう、と思っているらしい人々は数人しかいなかった。
その中に、偶然にもあの少女がいた。
気にはしていたのだが、同じものを勉強する、となると不思議な、妙な感覚になってしまう。
「あ。前はノートありがとうね。」
「ううん。いいんだよ。」
「化学、苦手なの?」
「ちょっとね。」
「あたしは得意だけれどね。面白いから。」
「面白い?」
「うん。人間関係を見ているようで、勉強になるから。」
「どういうこと?」
「物質には力がある。四つ、とも言われてるけれど。
とにかく、そんな力、引力みたいなもので惹かれ合ってくっついて。
他にも、化学の現象って言うのは人間関係だとか人間のすることに似通ってるところがあるんだよ。」
「へぇ・・・。」
「だから、好きなんだ。ふふ。」
「じゃあ、時々化学は教えてもらおうかな。」
「いいよ。」