銀鏡神話‐玉響の驟雨‐






「そうか、貴公が彼等の……」

フィルリアに向けていた聖法杖を彼は床に向けた。

「貴方のせいでどれだけ我が一族が苦しんだ? 考えた事が有るか?」

怒涛のフィルリアの責めに法皇は反論せず、ただただ俯いた。

「申し訳ない……」

あの法皇が、聖国を占める覇者が、二十にも満たない少女に謝ってる。

度肝を抜かす光景に、俺は頭が痛くなってきた。

「謝られたところで、皆は還って来ないんだ。

だから、死をもって償ってもらう。」

フィルリアは長刀を法皇の喉元へ向ける。
だが法皇は抵抗しなかった。

「……私は生きていて良い人間では無いからな――――」

手に力を込めて長刀を握り絞める。

莫迦だな……震えてるじゃねーか……

「フィルリアっ!」

「!? ケリア!」

母さんがフィルリアの元へ駆け寄った。

がたがたと長刀を握る手を彼奴はもっと震わせた。

「駄目だよフィルリア……

人の命を奪うなんて……

例え復讐でもやってはいけない事なんだよ?」

母さんはフィルリアから長刀を軽々と取り上げた。

何も言わないで、がたがたと怯える、小さな女の子に彼奴は戻りかけてた。

一件落着。

皆そう思っただろう。

歯車は止まらなかった。

それどころか、残虐な方向へと加速していたんだ。


パンパンパン


控え目な拍手が聞こえてきた。
ティーナ皇女だ。

「お父様、貴方って人は、重ね重ね、莫迦な人です。」

「!? ティーナ!?」


バンッ


「リオルト法皇様!?」

ティーナはリオルトの腹部に向かって、小型な銃で一発撃った。
血相を変えて、リリーは駆け寄った。

「潮時……哀しいね。」
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