愛詩-アイウタ-
 1年の頃は、思いっきり打ち付けてたけど。



 音楽室の床は布地で水色。音が反響しないように、ということらしい。



 グランドピアノの足にふたりでもたれかかる。



 背中が少し痛い。



「るぅ~ピアノ弾ける?」



「習ってたからなぁ」



 少し照れくさそうに言う。



「でもそんなうまくないし」



「うそ!!中学ん時超うまかったよ!朝礼とかいっつもピアノるぅだったじゃん」



 指揮者は雨宮さん。ふたりが付き合ってるっていうのを聞いたことがある。中学の時の話。



「あれはただ…雅先生に好かれてたから」



「それでもすごかったよ!指揮者とも息ぴったりだったし」



 ひと呼吸おく。



 別に、聞くくらい、いいよね?


「さすがカレカノってみんなで言ってたんだよ~」



 るぅの表情が少し曇る。言わない方がよかった?



「光璃だってずっと佐志と付き合ってただろ」



 怒ってる、かもしれない。


 佐志とは、2年間ひぃが付き合ってた、佐志廉矢。



「だってひぃ、るぅのこと好きだったのに雨宮さんと付き合うからさぁ。廉が告って来たから、付き合ってみた」



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