僕の時

 「おだ!」
確信的に少女が叫ぶ。

彼女に駆け寄ると。
「おだ…どうして来たの…。」
切ない目だった。


あぁ…この目…前にも見たね。

死に際のおじいさんの顔。

嬉しいけど切ないって顔。

今ならこの顔の意味、わかるよ。

彼女の目から1筋の涙。

「ありがと…。来てくれてありがとう。」

−−−来てよかった。
君は死んで、僕は一生生き続ける事になるかもしれない。
でも今は素直にそう思えた。


でも来ただけ…。来れただけだよ…。

僕は…死ねない。
一緒に死んであげられないんだ…。

一緒に…。

「おだ…。」

彼女は微笑むと力なく倒れた。
そして小さな唇をそっと動かした。
「………。」
同時におだも気付いた。
「…っ!」

どきん…
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