月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 光の立場だったら。でもあたしは光じゃないから……。

「あたしお姉ちゃんみたいに頭良くないけどさ、ほら、お姉ちゃんの名前にあたしも入ってるし」

「名前?」

「うん。晃、光って。だから」

 そんな風に思っていたんだ、光。

「なんか1人じゃないって思うんだよね。なんかね」

 エヘヘ、と恥ずかしそうに言った。言われたこっちもなんだか恥ずかしい。

 晃に光。どっちも男みたいな名前だなって思ったことはあったけど、光にそう言われて、あたしは初めて自分の名前が温かく愛おしく感じた。

 時にうざかったり、ムカついたり。なんで姉妹ってこんなに面倒なんだろうって思ったこともあったけど。嬉しかった。光、あたしの妹。

 豆電球だけ点いていて、その灯りに薄く照らされたあたしの部屋は、光の部屋みたいに好きなグループのポスターを貼ったりしないから、殺風景に感じた。もうちょっと明るい感じに模様替えしてみようかな。冬海が来ることを想像したから。

「お姉ちゃんの彼氏って、美形だね。美少年って感じ」

「え!」

 そういきなり言われてドキリとする。まぁ、たしかにそうなんだけど……。はい、そうです……。

「クラスの人? 告白どっちから? いつから?」

 光の矢継ぎ早な質問に、ちょっとだけ答えるのが面倒だなって思ったけど、そこは姉なので。

「1つ下。まぁいろいろあって」

「えーなにその大人な返し方!」

 ほっぺたを膨らませた光だったけど、「年下かぁ~」なんて言いながら、横向きになっていた体を仰向けに直した。

「優しいね、来てくれて……」

「光の彼氏だって優しいでしょうよ」

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