月光レプリカ -不完全な、ふたつの-


 ピリリリ、ピリリリ。


 あたしのケータイじゃない。店内は誰も居ないから、店員? そんなわけない。ということは、冬海だ。

 入口にある買い物カゴの所まで行っていたから、そっちの方向から着信音。ピリリリ、ピリリリ。ピリリリ、ピリリリ。

 出ないのかな。


「センパイ昼飯いいの?」

 カゴを持って冬海が戻ってきた。ピリリリ、ピリリリ。制服のポケットから音がする。ピリリリ、ピリリリ。出ればいいのに。


「ケータイ、鳴ってるけど」

 ピリリリ、ピリリリ。ピリリリ、ピリリリ。

「ああ、いいよ別に」

 ピリリリ、ピリリリ。ピリリリ、ピ。止まった。

「出てもいいのに」


 出てもいいけど、なんとなく、あたしはあの白いセダンの女の人なんじゃないかと思った。冬海はポケットからケータイを取り出して開き、確認しているようだった。

 整った顔に嫌悪の表情が浮かぶ。

 予想はきっと、当たっている。少しだけど、そう感じる。授業中はサイレントにして鞄の中だろうから、こうやって連絡があっても休み時間とか放課後に折り返し連絡を入れているんじゃないの?


「別にいいんだよ、今日は無し」

 何が、無しなんだろうか。思わず口走ってしまったんだろうその言葉。

 不安は薄い確信へと変わりそうで、すごく嫌だった。

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