月光レプリカ -不完全な、ふたつの-
 数分でタクシーが来た。優しそうな運転手さんだった。少し白髪の混じったオールバックが印象的なおじさん。

「高校生だって? まーどっから来たのー?」

「仙台です」

 バスで来て電車に乗り換えだとか、秋田駅でお土産を見たとか、そういう話をしながら出発した。白い布のかかったシート。後部座席にあたしと冬海と2人。
 助手席の前にある名札を見ると、運転手さんの名前は「三浦さん」だった。呼ぶ時は「三浦さん」て呼んだ方が良いのかな。

「あ、あんまり駅から離れないうちに聞いておくけど、駅さ何時まで帰ってくればいいの?」

 信号待ちで停止してる時に、運転手の三浦さんが言った。

「夕陽見てからだと、遅いですか?」

「あー夕陽見ると今日は仙台に帰れなくなるねぇ」

 やっぱりそうか……入道崎で夕陽はこの次かな。

「そしたら、帰りは秋田駅に送って行くからね。バスは秋田駅から出るんだろう? 男鹿駅だと帰りにくいだろうから。そしたら入道先に少し長く居られるんでないかな?」

「良いんですか? そこまで……」

 三浦さんがあんまりサービス精神旺盛なので、心配になってきた。冬海もそう思っていたんだろう。道路のデコボコが体に伝わった。

「アンダ達を無事に送り届けるのが仕事だから。男鹿を楽しんでって」

 アンダ達=あなた達。良い運転手さんに当たって、本当に良かったな。

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