ダブルベッド

 彼氏はいないだろうと予想……いや期待をしていた充は、見え隠れする男の影に一喜一憂する。

 一人なのに、ダブルベッド?

 誰かと寝るためのベッドだと捉えるのが自然である。

 玄関には女物の靴しかなかった。

 男がいるとしても、一緒に住んでいるわけではないらしい。

 あれ、キッチンの隅にあるのはガラス製の灰皿だ。

 吸殻まで入っている。

 桃香はタバコを吸わないのに。

 ああ、桃香が自分を呼んだのは、やっぱりただ単に一番近くに住んでいたからなのだろうか。

 いや、でもこんな夜中に。

 しかも風呂上りに。

 ノーブラで。

 やっぱり実は、何か期待してる?

 男の都合の良い解釈が充の頭を支配する。

 充は桃香に、軽く仕掛けてみることにした。

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