ダブルベッド

 ドクッ……。

 予想だにしなかった「殺す」という言葉に、充の体が震えた。

 鼓動は高鳴り、言葉が出てこない。

 桃香は墓に顔を向けたまま続けた。

「もちろん、包丁で刺したとか、首を絞めたとか、そういうのじゃないのよ。けど……」

 充はふと昨日の会話を思い出した。

「もしかして、半年前の事故で?」

「そう。事故だったの。でも、あたしが殺したも同然よ」

 墓に供えられた薄ピンクの花は、まだ新しい感じがした。

 桃香は水だけを捨て、さっき買ったひまわりを一緒に筒に入れて、ペットボトルの水を入れる。

 墓は急に夏らしくなった。

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