ダブルベッド

 残りの水を墓石にかけると、心なしか涼しく感じた。

 充は桃香と同じタイミングで手を合わせる。

 セミの声以外は、静かな夏のお昼時だった。

 夏休みなのに、子供の声さえ聞こえてこない。

 桃香は立ち上がると、石でできた塀に腰を下ろした。

「毎週来てるの。先週も、木下くんを呼び出す数時間前はここにいたのよ」

 桃香は空を見上げながら呟く。

 眩しそうにというよりも、どこか遠くに思いを馳せるように目を細めて。

 充の頭に聞きたいことがいくつも浮かぶ。

 しかし、何一つとして聞いて良いような気がしなかった。

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