ダブルベッド

 桃香の態度からは、今のところ全く脈を感じられない。

 デートして、同じ部屋に泊まったにも関わらず、全く。

 今まで数年間、恋愛がスムーズにできていたのが嘘のように。

 だから充は、

「好きだ」

 と言えても

「付き合ってくれ」

 とは言えなかった。

 この時充の心には後悔が生まれていた。

 昨夜、約束を破って眠ってしまった桃香。

 どうせ望みがないのなら、せめて……。

 手なり何なり、出しておけばよかった、と。

 額にキスなんて可愛らしいことではなく、強引に起こしてでも……。

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