ダブルベッド

「何も聞かないのね」

「何もって?」

「事故のことよ」

「ああ。だって聞いたところで……何て言っていいかわかんないから」

 桃香は微笑んでいた。

「この話をして、好きだなんて言われたの、初めてだった」

「だって、好きなんだからそうとしか言えなかった」

「普通はこんな話をすれば、あたしのこと、面倒臭くなるものなんじゃない?」

「そうかもね。だけど」

「だけど?」

「俺の気持ちは変わってない」

 充はそう言いながら帽子をかぶり直した。

 墓場で愛を告白する。

 妙な空気だ。

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