ダブルベッド

 充の呼び掛けに桃香は視線で応えた。

「俺さ、どう言葉を掛けていいか、よくわかんねぇけど……」

「うん」

「それでもやっぱり、池田さんのこと好きだよ」

 墓場に似合わない好きという言葉は、桃香にどう聞こえたのだろうか。

 桃香は聞き流すように

「そう」

 と呟いた。

 昨日のデートは、楽しいだけではなかった。

 イライラすることもあったし、ケンカらしいこともした。

 笑ってムカついて、ドキドキして我慢してモヤモヤして……。

 言うこと成すことワケのわからない桃香が、充はやっぱり好きで。

 だけど――……

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