ダブルベッド

 人を殺したという過去を知っても、桃香を好きだと思う男がいるのだと。

 幸せにしたいと願う男がいるのだと。

「綺麗事よ……。現実は、そんなに甘くない」

 しかし桃香の前では、どんなに心を込めて口に出した台詞も、無力でしかなかった。

 桃香の罪は充が考えているよりずっと重く、傷はずっと深いところにまで刻まれている。

 桃香は自分で自分に幸せになってはいけないという重い罰を課した。

 恋愛すら、禁じた。

 充は桃香が作った分厚くて頑丈な心の扉の前に、もう成す術がない。

 桃香からその扉を開けてくれるのを、待つ以外は――……。

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