ダブルベッド

「どこ行けばいいっすかねぇ。マジデートなんて久々なんで、思い付かないっす」

 女の影すら見せない沢田にこういうことを相談するのは、少し嫌味だっただろうか。

 沢田はタバコをもみ消しながら、

「マジデートねぇ」

 と呟いた。

 吐いた煙がダルそうに換気扇に吸われていく。

 充だって年頃の男である。

 女との交友がないわけではない。

 合コンなんかで知り合って、デートできるくらいの女は何人かいるのだ。

 しかし正式に付き合わずに「良い関係」を貫いているのは、充のいい加減なところでもあり、要領のいいところでもある。

 それは沢田も承知のこと。

 マジデートと表現したのは、桃香とのデートは本気であるというアピールだ。

「そういや沢田さんて、彼女は?」

< 17 / 345 >

この作品をシェア

pagetop