キスフレンド【完】
時も『姫』と呼ばれ、男から絶対的な人気があった。


大学でも理子を狙う男はたくさんいるはずだ。


そんなこと分かりきっていることなのに。


それなのにどうしてこんな気持ちになるんだろう。


ここ最近、いつだってモヤモヤとした感情が胸の中に広がっている。


この感情が何なのか、俺は……ずっと分からずにいる。



「理子、もうすぐ昼だよ。遅刻するって」


「ん~……もうちょっとだけ……」


「そのセリフ3回目」


「だって……まだ眠いんだもん……」


寝ぼけながらそう答えて、再び目をつぶった理子。


本気で起こさないと本当に遅刻する時間だ。


だけど俺は再びベットに潜り込んで、寒がりな理子の体をギュッと抱きしめた。


もう少しだけ、寝かせておいてあげよう。


いや、違うな。


もう少し、俺が一緒にいたいんだ。



「理子。好きだよ」


「んっ……」


理子の耳元でそっと囁くと、理子はくすぐったそうに身をよじった。

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