キスフレンド【完】
「海斗もう帰るんでしょ?俺、今日も残業していくから」


「お前またかよ~。昼は大学、夜はバイトだしあんま無理すると体壊すって。家庭教師のバイトもしてんだろ?」


「大丈夫」


「大丈夫なはずないだろ。体力に自信がある俺だってこんなにへばってんのに。それにお前、俺よりバイトの回数多いじゃん」


海斗がそう言った瞬間。


「……――紫苑君、ちょっといい?」


事務所の扉からひょっこりと顔を出した美波さんがクイクイッと手招きした。


「……今、行きます」


またか。


内心うんざりしながらそう答えると、海斗が眉間にしわを寄せた。
< 270 / 363 >

この作品をシェア

pagetop