キスフレンド【完】
「美波さんも知ってるじゃないですか。俺、彼女がいるんですよ」


「それは前にも聞いた。それでもいいって、あたし何度も言ってるじゃない」


「二番目でもいいってことですか？」


「いいわよ。二番目でもいいって思うほどあたし、紫苑君にハマっちゃったの。紫苑が欲しいの」


ちらりと物欲しそうな視線を俺に投げかけてくる美波さん。


多分、大抵の男は今の上目使いにやられたはずだ。


俺は美波さんをまっすぐ見つめながらハッキリ言った。



「俺、二番目はいらないんですよ」


「そんな簡単に答えださないで少しくらい考えてよ」


「考える余地もないくらい、今の彼女のことが好きだから。そろそろ休憩終わるんで戻ります」


ああ、めんどくさい。


だけどあと１週間頑張れば、目標達成。


それまであと少しの辛抱だ。


「ちょっ……――、紫苑君!!」


何かを言いかけている美波さん。


俺はその声を背中に受けながらも、振り返ることなく歩き続けた。

< 273 / 363 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop