キスフレンド【完】
女の人の声……?


「誰かが紫苑のこと……――」


「振り返るな。そのまま無視して歩き続けて」


「え?でも……――」


「いいから」


不思議になって振り返ろうとすると、紫苑はそれを止める。


紫苑はさっきよりも歩くスピードを速め、あたしの手をぐいぐいと引っ張りながら歩いた。


紫苑……さっきから変だよ。


何をそんなに焦ってるの?



「……――も~!!無視しないでよ!!」


コツコツコツというヒールの音があたしたちのすぐそばで聞こえた。


それと同時に見覚えのない綺麗な女性が紫苑の腕を掴んだ。



「さっきから呼んでたのに聞こえなかったの?」


「……――すみません」


「まぁいいわ。あら、あなたが紫苑君の彼女?」


紫苑の腕を離すことなく、女性はあたしに視線を向けた。


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